私たちは、犬が吐く行為をすべて「嘔吐」と言いますが、吐く事が全て嘔吐と同じ意味ではありません。
嘔吐というのは、胃液や胃の中にある内容物を吐く行為のことをいいます。
吐く前に、お腹がゴボゴボ動き、グェーと胃液などを吐き出す感じが「嘔吐」です。
一方、食べ物が胃に届く前に吐く(吐き出す)ことを「吐出(としゅつ)」といいます。
吐出は、嘔吐と違い、お腹の中から吐き出す感じではありません。
食後すぐに吐き出すので、食べ物がそのままの状態で出てくるのが特徴で、ガツガツ掻き込むように、ご飯を食べる犬や子犬によく見られます。
犬は吐いた場合は、まずは慌てずに「嘔吐」なのか「吐出」なのかを見ましょう。
嘔吐の場合は、犬が「いつ吐いたのか」「どのようなものを吐いたのか」「嘔吐の回数」をしっかり確認し、動物病院を受診する際には、吐いたものを病院へ持って行ってください。
持っていくのが難しければ、携帯で写真を撮っておくと、獣医師に説明しやすいです。
目次
犬が嘔吐する黄色い液体は何?
犬は、黄色い液体を吐くことがよくあります。
この黄色い液体の正体は、胃液ではなく「胆汁」という消化酵素です。
通常、胆汁は肝臓から分泌され、十二指腸から腸へと吸収されます。
長時間胃の中が空っぽの場合などに、本来であれば腸へ吸収されるはずの胆汁が胃へ逆流することがあります。
この症状を「胆汁嘔吐症候群」といいます。
胆汁嘔吐症候群は、逆流した胆汁が胃を刺激した為に起きる嘔吐で、空腹になりやすい朝方や夕方によく起きます。
胆汁を吐くのを抑えるには、食事の回数を増やして、空腹の時間を短くするのが有効な方法です。
例えば、朝方吐きやすいのであれば、寝る前に軽く食べさせることで空腹の時間が短くなります。
そうすることによって、胃が正常に働き、胆汁の逆流を防ぐことができます。
黄色い液体を少量吐く以外の症状がなければ、食事の回数を調整して様子をみてみましょう。
黄色い嘔吐の症状と他の症状が見られる場合
黄色い液体(胆汁)を吐いても、食欲があり、元気な場合は心配いりません。
しかし、吐く回数が多かったり、その他の症状が一緒に見られる場合は、別の病気の可能性があります。
病気の場合は、このような症状が見られます。
- くり返し嘔吐する
- ぐったりしている
- 食欲がない
- 震える
- 体(お腹)を触ると嫌がる
- 白目の部分が黄色っぽい(黄疸が出ている)
一つでも当てはまる症状があるときは、すぐに動物病院を受診してください。
胆汁嘔吐症候群の犬は、「すい炎」「脂肪肝」「十二指腸炎」「高脂血症」「胆泥症」など他の病気を併発していることがあります。
特に、高齢になると内臓の機能が弱ってくるので、注意しましょう。
黄色い嘔吐をくり返す
ご飯を食べたり、水を飲んでいないのに、嘔吐をくり返す場合は、他の病気を併発しているおそれがあります。
「吐く」という症状が3日以上続くと、慢性化していると考えられるので、元気そうに見える場合でも注意が必要です。
また、嘔吐をくり返すと、脱水症状を起こすことがあるので、「毛艶が悪い」「元気がない」などいつもと違う様子が見られたら、すぐに動物病院を受診しましょう。
点滴をすることで水分の補給を行います。
黄色い嘔吐に血が混じる
犬が吐いた物の中に血が混じっている場合は、すぐに動物病院で診てもらってください。
胃や腸からの出血が疑われ、重大な病気の可能性があります。
特に、黒や茶褐色の嘔吐は、出血から時間が経っている証拠なので、緊急性が高いと思ってください。
その他、嘔吐することで「胃や食道が荒れている」「口の中の出血」でも、血が混じることがあります。
黄色い嘔吐と下痢をしている
嘔吐と下痢の2つの症状が出ている場合、胃や腸、すい臓などに関係する病気であることが多いです。
診療のヒントになるので、飼い主さんは、「いつ」「どのくらいの頻度」など嘔吐や下痢の回数をメモしておきましょう。
犬が吐いたものに加えて、便も一緒に動物病院へ持って行ってください。
黄色い嘔吐と震えがある
犬が嘔吐した時に震える場合は、「痛みがある」「脱水している」の2つのことが考えられます。
どちらの場合でも、病気の可能性があるので、すぐに動物病院で診てもらってください。
特に危険な嘔吐の症状
犬が吐いた状況によって、早めに動物病院を受診した方がいい場合があります。
嘔吐した時に、次のような症状があれば危険な嘔吐のサインです。
- 吐いた後、ぐったりしている
- 苦しそう
- 体を丸めて痛そうにしている
- 嘔吐したものが、赤・茶・緑色
- 嘔吐したものが糞の匂いがする
これらの症状が当てはまる場合は、すぐに動物病院へ連れて行ってください。
いずれの症状も重症度が高く、一刻も早い治療が必要です。
犬の嘔吐の原因
犬は、とても吐きやすい動物です。
人間は2足歩行なので、直立した状態だと食道や胃が縦向きですが、4足歩行の犬は、横向きになっており、体の構造自体が吐きやすい様になっています。
また、胃酸が濃いのも吐きやすい要因の一つです。
犬が吐く原因は、主に4つあります。
- 生理現象
- 病気
- アレルギー
- ストレス
生理現象で吐く
犬が散歩の時に、草を食べて白い泡や透明の液体を吐き出すことがありますよね。
これは生理現象の一つです。
犬が吐く白い泡や、ドロッとした透明の液体は、胃液や胃粘液になります。
はっきりとした理由は分かっていませんが、犬が草を食べて吐くのは、犬自身が胸焼けのような症状を感じ、草を食べることで胃の中の食べ物や胃酸を出そうといると考えられています。
この場合の嘔吐は、くり返し吐いたりしなければ、そのまま様子を見て大丈夫です。
ただ、草に除草剤などが巻かれている可能性があるので、自宅の庭など安全が確認できる場所の草のみを食べさせるようにしましょう。
病気が原因で吐く
犬が吐く場合、胃や腸の消化器系や腹腔系に問題が起きると、嘔吐の症状が出ます。
病気が原因で吐いている場合は、血液検査やレントゲン検査などで原因を見つけます。
嘔吐が見られるのは、次のような病気になります。
- 胃腸炎
- すい炎
- 胃拡張(胃捻転)
- 腸閉塞
- 腸炎
- 腹膜炎
- 熱中症
- ウイルス感染
- 寄生虫感染
- 中毒(玉ねぎ・チョコレート・ぶどう・腐ったもの)
その他、飼い主さんが知らない所での誤飲・誤食も嘔吐の症状が見られます。
誤飲・誤食の場合、原因が不明なこともあり、はっきりと原因が分かるまで時間がかかる事があります。
アレルギーが原因で吐く
ドッグフードや、特定の物を食べた時に吐くなどがあれば、食物アレルギーの可能性が高いです。
食物アレルギーの場合は、嘔吐の他に「下痢」「皮膚の赤み」「体を痒がる」「抜け毛」などの症状が見られます。
目や口の周りの痒みや赤みは、典型的な食物アレルギーの症状なので、すぐに動物病院を受診してください。
食物アレルギーは、アレルゲンを排除するまで症状が治まらないので、アレルギーの検査をし、原因を特定しましょう。
ストレスが原因で吐く
犬は、ストレスに弱い動物です。
そのため、ストレスが原因で吐くこともよくあります。
身近なものでいえば、車酔いもその1つです。
1度車酔いを経験した犬は、車=嫌な思いや苦しい思いなどのイメージがついてしまい、車に乗ることにストレスを感じます。
車酔いで嘔吐する場合は、しばらくすると落ち着くので心配はいりません。
ただ、1度車酔いをした犬は、酔いやすくなるので注意しましょう。