犬が歩行困難になる原因の一つに「椎間板ヘルニア(ついかんばんへるにあ)」という病気があります。
椎間板ヘルニアとは、何らかの原因で椎間板に負担がかかり破損する病気で早期治療が大切です。
首から腰までの背骨で起きますが、胸と腰の中間あたりでの発症が多く見られます。
目次
犬椎間板ヘルニアの初期症状
次のチェック項目に当てはまる初期症状があれば、犬の椎間板ヘルニアの可能性があります。
秋から冬(10月から3月まで)の寒い時期は発症し易いので注意しましょう。
- 歩き方がおかしい
- 元気がない
- 段差が登れない
- 後足がふらつく
- 体に触らせない
- 震える
- 抱っこをすると鳴く
- おしっこを漏らす
これら全てに当てはまらなくても、歩き方や立ち方に何らかの異常を感じたら動物病院を受診しましょう。
特に「おしっこを漏らす」場合は、排尿障害が起こっている可能性があるので、すぐに受診してください。
犬の椎間板ヘルニアは2種類ある
タイプ別に「ハンセン1型・ハンセン2型」の2つに分けられます。
ハンセン1型は、椎間板が飛び出して脊髄神経を圧迫し痛みが起きます。軟骨異栄養症性犬種(ダックスフンド・ビークル・コッカスパニエル・シーズー・ウェルッシュコーギーなど)に多く見られ、6歳未満で発症する事が多いです。軟骨異栄養症犬種は、若年齢時に軟骨の変形が起きやすく椎間板への負担が増えます。
ハンセン2型は、どの犬でも発症する可能性がありますが、柴犬・大型犬(ラブラドールレトリバー・ゴールデンレトリバーなど)に多く見られます。また特に高齢犬に多く、慢性的な椎間板への負担から発症します。
犬椎間板ヘルニアのグレード
犬の椎間板ヘルニアは症状によってグレードが分けられます。
- グレード1
- 歩行できるが、段差や階段が登れない、または動きたがらない。
痛みがあるので、触ったり抱っこをすると鳴く。 - グレード2
- 歩行できるが、ふらついたり足先を引きずる。
少し神経の麻痺が出ている状態。 - グレード3
- 歩行が難しく、後足は動かせない。
歩行する場合は、前足のみで動き、後足は引きずる。 - グレード4
- 完全に神経が麻痺しており、自分で排尿することができない。
深部痛覚はあるので、痛みは感じる。 - グレード5
- 深部痛覚がなくなり、痛みを感じない。
犬椎間板ヘルニアの診断と治療法
グレードや病状によって、内科治療と外科治療を行います。
動物病院での診断方法
動物病院での診断は「X線検査・神経学的検査・MRI・CT」などで行います。
X線検査では椎間板の状態を確認できませんが、似たような症状が出る骨折や腫瘍の疑いもあるので、除外診断の為に使います。
神経学的検査と合わせて行い、犬が椎間板ヘルニアかどうかを判断していきます。
その後「MRI・CT・脊髄造影X線検査」などを行い、患部を特定します。
犬椎間板ヘルニアの内科治療
病状が軽度な場合は、内科治療で通院での治療法になります。
消炎鎮痛剤やビタミン剤を投薬し、絶対安静(※)にして治していきます。
ただ、根本的な治療法ではないので再発する恐れもあり、日常生活での注意が必要です。
絶対安静とは、絶対に安静にしておくという意味ですが、この場合は家から外出しない程度のレベルではありません。
ケージレストと言って、トイレ以外は狭いケージの中で安静にしている事を指します。
極力動かさない事が重要で、椎間板が安定するまでこれを行います。
少しかわいそうな感じがしますが、安静にすることが一番の治療だと理解しましょう。
犬椎間板ヘルニアの外科治療
犬の椎間板ヘルニアは、症状が重度の場合は手術を行います。
例えばグレード5では、すぐに手術を行う必要があります。
72時間内に圧迫を取り除かないと、神経に麻痺が残る事が多く、元のように歩くことができません。
手術方法は色々ありますが、背中から神経を圧迫している部分を取り除く推弓切除術が一般的です。
頸部であれば喉から取り除きます。
犬椎間板ヘルニアの手術費用
動物病院は自由診療なので、病院によって手術費用が違います。
【検査・手術費用の参考例】
項目内容 | 費用目安 |
---|---|
初診(再診料) | 初診1,000円~1,500円 (再診500円~1,000円) |
血液検査 | 6,000~10,000円 |
X線 | 2,000円~6,000円 |
X線診断・読影 | 1,000円~1,500円 |
CT(術前・術後2枚) | 20,000円~30,000円×2 |
CT診断・読影(術前・術後2枚分) | 1,000円~×2 |
静脈注射 | 1,500円~2,000円 |
筋肉注射 | 1,000円~1,500円 |
点滴(1回あたり) | 2,000円~4,000円 |
全身麻酔(吸入60分あたり) | 10,000円~15,000円 |
推弓切除術 | 50,000円~55,000円 |
入院費(1日あたり)
症状によって日数が変わります。
サイズ | 費用目安 |
---|---|
小型犬 | 2,000円~4,000円 |
中型犬 | 2,000円~4,000円 |
大型犬 | 3,000円~6,000円 |
この他にも、夜間や休日であれば「夜間・休日診察料」や薬代など、状況に応じて加算されます。
トータルで約200,000円~300,000円くらいが犬の椎間板ヘルニアの手術費用の目安となります。
レーザー治療(PLDD)と鍼灸治療も効果あり
内科治療と合わせて行ったり、手術後の回復補助(リハビリ)などで使われます。
その他、再発防止に定期的に施術を受けるなど用途は様々です。
レーザー治療について
内科治療と合わせて行う事が多いです。
患部の治療のほか再発予防にも使われます。
痛みがほぼ無く、副作用も少ないので効果的な治療法の一つとなっています。
但し、すぐに効果がでないので、継続して行う必要があります。
鍼灸治療について
鍼でツボを刺激すると、犬も人と同じように痛みが和らいだり、免疫力が上がる効果がある事が分かっています。
手術ができない、または手術を希望しない場合に選択される事が多いです。
鍼灸治療を行っていない病院もあるので、事前に調べておきましょう。
※効き目は個体差があるので、必ず回復するわけではありません。
犬椎間板ヘルニアの原因を予防しよう
完全に予防するのは難しいのですが、原因を知っていれば軽度で抑えたり発症し難くすることができます。
まずは食事に気を付けよう
犬は4足歩行なので、肥満による体重増加は体にとても負担がかかります。
ドッグフードやおやつの与えすぎは肥満に繋がるので、注意しましょう。
筋力アップとダイエットに有効な、高タンパクで低カロリーなドッグフードを選びましょう。
モグワン ドッグフード
椎間板ヘルニアを悪化させない為には、筋肉を付ける必要がありますが、モグワンは高タンパクなドッグフードなので、筋肉を作るのに最適だと言えます。
またグレインフリー(穀物不使用)なので、消化吸収がよく炭水化物による肥満を防止します。
ロイヤルカナン「ブリードヘルスニュートリション」
ロイヤルカナン「ブリードヘルスニュートリション」シリーズのダックスフンドです。
椎間板ヘルニアの罹患率が高いダックスフンド用に配合されたドッグフードです。
筋肉を維持する為に必要なL-カルニチンが配合されています。
高タンパク低脂肪で、体重管理にも効果的です。
ヒルズ「サイエンス・ダイエット」
ヒルズ「サイエンス・ダイエット」シリーズのライト(肥満傾向の犬用)です。
小型犬用の低カロリー低脂肪の体重管理用ドッグフードです。
食物繊維を多く含んでいるので、食べた後も満腹感が持続します。
犬の生活空間を見直そう
犬の椎間板ヘルニアの予防は、腰や首に負担をかけない事が重要です。
毎日過ごしている部屋を見直してみましょう。
滑るフローリングはキケン
ツルツル滑る床は、足を踏ん張る事ができず、椎間板に負担がかかります。
カーペットやコルクマットなど滑りにくい物を敷くようにしましょう。
犬の足の裏の手入れも併せて行うと効果的です。
階段は腰の負担が大きい
軟骨異栄養症性犬種(ダックスフンド・ビークル・コッカスパニエル・シーズー・ウェルッシュコーギーなど)は、特に注意しましょう。
階段を昇り降りする回数を減らす、またはスロープを付けるなどの対策をして下さい。
ソファーやベッドなどの段差
階段と同様にスロープなどをつけ、なるべくジャンプしないように工夫しましょう。
運動をさせ過ぎない
予防には筋力トレーニングも必要ですが、ハードな運動は控えましょう。
毎日の散歩程度で抑えておくと安心です。
外出時も階段や大きな段差はなるべく避けてください。