平成24年9月に改正された「動物の愛護及び管理に関する法律」で、平成30年までにマイクロチップの装着の義務化を検討するという発表がありました。
既に、欧米・オーストラリアなどでは犬のマイクロチップ装着は広く普及しています。
海外から日本に輸入される犬には、すでにマイクロチップの装着が義務付けられていますし、日本から海外に輸出する場合も国によってはマイクロチップ装着が必要になります。
日本では「犬にマイクロチップを埋め込むことは必要か?」という意見もあり、海外と比べると普及率が低いのが現状です。
目次
犬のマイクロチップとは?
犬のマイクロチップは、直径2mm、長さ12mm程度の大きさの物です。
マイクロチップ内部にはアンテナとICタグが内臓されています。
個体認識番号として15桁の数字が記録されており、一度マイクロチップを埋め込むと、個体認識番号の変更や改ざんが出来ないようになっています。
耐久年数は30年くらいで、電池式ではないので半永久的に使用が可能です。
生後2週間の子犬から装着できます。
マイクロチップに記録されたデータは、動物病院・保健所・動物保護センターなどで専用のリーダー(専用の読み取り器)を使って番号を読み取ることができます。
犬に埋め込むマイクロチップは、国際標準化機構(ISO)11784及び11785に適合している物になります。
現在、国内で主に販売されているマイクロチップは、DATAMARS社アイディール・AVID社マイクロチップII・DESTRON社ライフチップ・TROVAN社トローバンID-162のマイクロチップの4つです。
犬にマイクロチップを装着するには?
犬にマイクロチップを装着するのは医療行為になるので、動物病院で行います。
埋め込み方法は、通常の注射と同じ要領で行われるので、麻酔などの特別な処置は必要ありません。
マイクロチップの装着方法
マイクロチップ自体が小さいものなので、装着も驚く程簡単です。
マイクロチップの装着は、専用インジェクター(注射器のようなもの)を使って、予防接種と同じように行います。
専用インジェクターは、注射器より少し太さがあるので痛そうに見えますが、通常の注射と痛みは変わりません。
マイクロチップ装着の場所は決まっていませんが、犬の場合は、首の後ろの皮下に埋め込むのが一般的です。
ごく稀に、皮下の中で移動することがありますが、筋肉組織には移動できないので、データの読み取りに支障ありません。
マイクロチップによる副作用
犬のマイクロチップは、体内に埋め込んでも副作用が起きないように、チップの外側を「生体適用ガラス」または「ポリマー」で保護されています。
そのため現在のところ、日本国内での犬のマイクロチップの埋め込みによる副作用(腫瘍など)やショック症状は、1件も報告されていません。
マイクロチップが体に影響を及ぼす危険はほとんどなく、
海外での副作用の症例では、何千万頭のうち腫瘍が認められた症例が2件報告されています。
これは、ワクチン接種による副作用と比較してもはるかに少なく、マイクロチップが体に影響を及ぼす危険はないと言えます
犬のマイクロチップの料金価格
犬にマイクロチップを装着する場合、データ登録費用(1,000円)と装着費用の2つの費用が必要になります。
【マイクロチップ装着料金】
「診療費込み」や「データ登録料込み」など、動物病院によって料金が違います。
事前に料金を問い合わせておくといいしょう。
マイクロチップ装着料金は、4,500円から6,000円くらいが目安です。
犬のマイクロチップ埋め込み助成
各都道府県では、犬のマイクロチップの装着を普及する目的で、助成を行っています。
助成の有無や条件は地区で異なりますが、1,500~2,000円程度でマイクロチップの装着が可能です。
詳しく知りたい人は、お住まいの地域の獣医師会、または動物愛護管理行政担当で問い合わせてください。
犬のマイクロチップの登録
犬にマイクロチップを装着した場合、データ登録を行う必要あります。
データ登録は、お住まいの地域によって、「動物病院が代行して行う」「自分で行う」の2つの方法があるので、必ず登録方法を確認してください。
マイクロチップに登録したデータは、AIPO(動物ID普及推進会議)が管理を行います。
AIPOは「日本動物愛護協会」「日本動物福祉協会」「日本愛玩動物協会」「日本獣医師会」の4団体から構成される公的機構です。
マイクロチップに登録する情報
犬に埋め込むマイクロチップには、飼い主情報と別に獣医師による動物情報を登録します。
【飼い主情報】
- 氏名
- 住所
- 電話番号
- FAX
- 緊急連絡先(携帯電話)
【動物情報】
- 犬の名前
- 生年月
- 性別(去勢・避妊・不明)
- 種類コード
- 毛色コード
- ID番号(15桁)
- 獣医師名
- 登録番号
- TEL
- FAX
- 住所
- 動物病院名
登録には、2~3週間程度かかり、登録が完了したら「AIPO登録完了通知はがき」が届きます。
マイクロチップの登録書類・AIPO登録完了通知はがきは、なくさないように大切に保管してください。
犬のマイクロチップ登録は、必ずAIPOで行ってください
現段階で、犬のマイクロチップのデータ登録を管理している団体は、AIPOの他にFam(ファミリーID管理機構)があります。
Famは一部のペットショップなどに利用されているようですが、認知度が低いです。
実際に動物病院・保健所・動物保護センターなどで、データ照会として使用されるのはAIPOのデータベースになります。
つまり、Famにデータ登録していても、データ照合で使われるのはAIPOのデータベースなので、意味がないということです。
Famにデータ登録している人は、必ずAIPOにもデータ登録を行ってください。
新たにAIPOにデータ登録する場合は、マイクロチップを入れ直す必要はありません。
Famに登録されている番号をAIPOに登録し直すだけで簡単に行う事ができます。
それでも分からない場合は、動物病院でデータ照会を行い、確認してください。
マイクロチップの登録(住所変更)のやり方
マイクロチップに登録した情報に変更があった場合、マイクロチップデータ変更の手続きを行ってください。
特に、引っ越しなどで住所・電話番号が変わったら、速やかに変更を行いましょう。
変更の手続きに費用はかかりません。
必要な物は、下記のいずれか1つになります。
- AIPO・IDデータ登録申込書(飼い主控え)
- AIPO登録完了通知はがき
- ライフチップ・受付完了はがき
該当する書類がない場合は、AIPO事務局に問い合わせてください。
オンラインで登録(住所)変更手続き
マイクロチップの登録情報の変更は、動物ID情報データベースシステムでも行えます。
オンラインでの手続きの場合は、「AIPO・IDデータ登録申込書(飼い主控え)」「AIPO登録完了通知はがき・受付完了はがき」がなくても、免許書などの公的機関発行の身分証明書があれば変更可能です。
AIPO・IDデータ登録申込書で登録(住所)変更手続き
- AIPO・IDデータ登録申込書(飼い主控え)をコピーします
- コピーしたAIPO・IDデータ登録申込書の左上の区分「変更」に〇をつけ、変更箇所を二重線で消し、変更内容を明記します
- AIPO事務局に郵送、またはFAXで送ります
AIPO登録完了通知はがき・受けつけ完了はがきで登録(住所)変更手続き
- AIPO登録完了通知はがき・受付完了はがきの「ID番号」が書かれている面をコピーします
- 余白に変更内容を明記し、AIPO事務局に郵送、またはFAXで送ります
マイクロチップで犬の場所は分かりません!!
マイクロチップには、GPS機能はついていないので、犬の現在地が分かるわけではありません。
動物の愛護及び管理に関する法律では「動物の所有者は、その所有する動物が自己の所有に係るものであることを明らかにするための措置として環境大臣が定めるものを講ずるように努めなければならない」とされています。
マイクロチップは、犬が動物病院・保健所・保護センターなどに保護された場合に飼い主を見つけるための物なのです。
最近では、GPS機能がついた首輪やGPSを使った位置情報サービスなどがあります。
マイクロチップ装着と合わせて使うとより安心です。
犬にマイクロチップを装着するメリット・デメリット
犬にマイクロチップを装着する最大のメリットは、データ照合できる場所(動物病院・保健所・保護センター)であれば確実に個体を識別できることです。
万が一、愛犬が迷子になっても、保護さえされていれば見つかる可能性が高まります。
デメリットは3つあります。
- マイクロチップの装着費用
- 確認にマイクロチップの読み取り機が必要
- 装着するときに痛みを伴う
※)ワクチン接種時の注射と同じくらい(少し針が太い)の痛みという事なのであまり心配はないのですが、注射が苦手な怖がりな犬であれば負担になることもあります。