肝臓は、初期の発見が難しく、症状がでた時にはかなり進行していることがあります。
早期発見するには、定期的な健康チェックを行いましょう。
目次
犬の病気『肝臓病』はとても怖い病気
肝臓病は、肝臓が炎症を起こしたり(肝炎)、肝臓が正常に働かなくなる(肝硬変)病気です。
肝臓は、多くの役割を担っており、肝臓が正常に働かないと体のいろいろな機能に支障が起こります。
肝臓の主な働き
肝臓の主な働きは、4つあります。
栄養素の分解・合成・吸収
肝臓に送られた栄養素を臓器や血液に合うように作り変えて、それぞれに送ります。
その他、ブドウ糖を貯蓄出来るように形を変え、必要な場合にブドウ糖に戻してから体内に送りだす事ができます。
有毒な物を解毒
タンパク質を分解して出るアンモニアを解毒して尿素に変えるなど、有毒な物質を分解解毒して、無毒化します。
消化液の分泌
肝臓で合成したコレステロールをもとに消化液を作り、胆汁を分泌して消化をサポートします。
血液を作る
血液を凝固するのに必要な凝固因子を作ったり、赤血球の表面を覆う物を作ります。
犬の肝臓病の原因
肝臓病は、様々な原因があり特定するのが難しいと言われています。
肝臓病の主な原因は4つあります。
感染によるもの
ウィルスや細菌に感染して起こります。
犬伝染性肝炎といい、犬アデノウイルス1型に感染したことで発症します。
すでに感染している犬の鼻水や糞尿を舐めたりすることで、うつります。
治療しても半年から9カ月くらいはウィルスを保有しており、尿から排出されるので注意しましょう。
遺伝性によるもの
特定品種に多い銅蓄積性肝臓病は、銅を適切に排除できず、体に蓄積してしまう病気です。
日本ではあまり見られませんが、ベドリントン・テリアの半数以上がキャリアではないかと言われています。
ドーベルマン、プードル、ラブラドール、コッカースパニエル、ダルメシアンにもよく見られます。
これらの犬種を買うときは、定期健診と食事の制限を行った方がいいでしょう。
先天性によるもの(門脈体循環シャント)
通常の肝臓では、栄養分やアンモニアなどの有毒なものは門脈を経由して肝臓に運ばれ、分解や解毒を行います。
門脈体循環シャントは、血管の奇形により、肝臓を通らずに、栄養分やアンモニアなどの有毒な物が全身を循環してしまう病気です。
子犬に多く、ヨークシャテリア、シーズー、M・シュナウザー、シェルティーによく見られます。
中毒性によるもの
薬や毒物を摂取した事で起こります。
特定の薬や毒物ではなく、あらゆる物で発症する恐れがあるので注意しましょう。
例えば、除草剤を撒いた後の草を食べたり、ゴミを漁ってカビがついた物を口にしたり、別の病気で長期間の薬を飲んでいる場合も、症状が起きる事があります。
こんな症状があったら犬の肝臓病に要注意
肝臓病は、初期段階ではあまり症状が出ない為、愛犬の異変を見つけることが重要になります。
- 食欲がない
- いつもより水を飲む量が多い
- 元気がない
- おしっこが濃い
- おう吐する
- 白目や歯茎が黄色い
1つでも当てはまることがあれば、病状が進んでいる可能性があります。すぐに病院で検査しましょう。
犬の肝臓病診断
肝臓病の診断は、血液検査や画像診断などを行い、総合的に判断します。
- 血液検査 血液検査をして、数値を調べます
- 画像診断 レントゲンやエコーを使って、肝臓の大きさや形状を確認します
- 血清総胆汁酸測定 食前・食後の総胆汁酸を比較します
- 生検 肝臓の組織の一部を取り、検査します。
肝臓の数値について
肝細胞の中の酵素ALT(GPT)やAST(GOT)、ALPなどの数値を調べます。
ここで、問題になるのが数値の高さですが、数値が高い=肝臓が悪いわけではありません。
もちろん、肝臓が悪い場合もありますが、その他の要因で肝臓が活発に動いている状態であれば数値が高くなります。
数値だけで判断できないこともあるので、注意しましょう
ALT(GPT)
肝臓に多く含まれる物質で、ALTとGPTは同じ物質です。
血液中にあまりない物質なので、肝臓が何らかのダメージを受けた時に血液中に流れ出して、数値が高くなります。
数値が高いほど、肝臓のダメージが強いと考えてください。
- 60U/L以下 平常範囲内です
- 60U/L~100U/L 慢性肝炎の可能性があります
- 100U/L~数千U/L 深刻な病状の可能性があります。薬の副作用や体に害になる物を誤飲した場合も、急な上昇がみられます
AST(GOT)
肝臓・赤血球・骨格筋・心筋に分布し、肝細胞がダメージを受けて壊れてると、血液中に流れ込むので数値が上昇します。
20U/L~70U/Lくらいが正常範囲内です。
※AST(GOT)の数値が上昇しても肝臓が悪くないこともあります
- ALT(GPT)とAST(GOT)が一緒に上昇⇒肝機能がダメージを受けています
- AST(GOT)のみ上昇⇒筋肉がダメージを受けています
ALP
ほとんどの組織に分布していますが、特に肝臓・子宮・骨・腎臓に多く分布しています。
20U/L~160U/Lくらいが正常範囲内です。
※ALPの数値が上昇しても肝臓が悪くないこともあります。
- 肝臓以外で炎症があれば、数値があがります
- 骨に多く分布しているので、成長期には病気ではなくても数値が高くなります
肝臓病の犬の食事管理
肝臓病の治療は、毎日の食事がとても重要です。
ただし、病状で自己判断ではなく獣医師の指示に従ってください。
与える物は、次の物を参考にしてください。
高タンパク質
肝細胞を再生するには、良質のタンパク質が必要です。
ただし、すべての犬に当てはまるわけではなく、病状によって制限される事があります。
消化が良い炭水化物
肝細胞の再生をサポートします。
消化が悪いとアンモニアの生成が増え、肝臓に負担をかけるので、消化の良い物を選びましょう。
亜鉛
亜鉛が不足すると、壊れた肝細胞が固くなり、肝硬変になる事があります。
ビタミン
ビタミンC・E・ルテイン・タウリンは、がんの発生を促進するフリーラジカルから細胞を守ります。
L-カルニチン
脂肪代謝をサポートし、必要なエネルギーを作りやすくします。
犬の肝臓に良いフードを探そう
病状によっては、食べて良い物・悪い物が違います。
獣医師に相談してから、与えるようにしましょう。
モグワン ドッグフード
肝臓への負担を減らす為に必要なタンパク質・ビタミン・ミネラルがバランスよく入っています。主原料であるチキンは、不飽和脂肪酸が多く、血中の中世脂肪・コレステロール値を調整してくれます。
高タンパク・低炭水化物のドッグフードなので、消化吸収に優れています。
ヒルズ(プリスクリプション・ダイエットl/d)
肝臓病の食事療法用のドッグフードです。高レベルのL-カルニチンが含まれており、脂質代謝をサポートします。
その他、肝機能を改善させるアルギニン・亜鉛も配合されています。
フィッシュ4ドッグ(サーモン)
飽和脂肪酸が少ないサーモンが主原料のドッグフードです。サーモンは、質のいいタンパク質が摂れ、DHA・EPAやビタミンが豊富に含まれています。
犬の肝臓病にサツマイモが良い?
肝臓病にさつまいもが良いと言われていますが、さつまいも全般ではありません。
紫芋のような実の部分が紫色の種類の物は、アントシアニンというポリフェノールの一種が多く含まれています。
アントシアニンは、抗酸化作用に優れており、ALTが減少するなどの肝臓の機能を向上させる働きがあります。
アントシアニンが含まれる食品
- ブルーベリー(ビルベリー)
- カシス
- アサイー
※与え過ぎには、注意してください
その他の犬の肝臓に良い食べ物
さつまいも以外でも、肝臓に良い物はたくさんあります。
青魚
イワシ・サバなどの体が青い魚は、EPA・DHAが多く含まれています。
EPA・DHAは、肝臓内のミトコンドリアを活発します。
ゴマ
ゴマに含まれるゴマリグナンが肝機能向上させます。
殻は消化が悪いので、食べる直前に擦って加えましょう。
1日5g程度が目安です。
かぼちゃ
ビタミンAが豊富で、肝臓に発生する活性酸素を取り除きます。